まさゆき研究所

ライター・加藤まさゆきのブログです。デイリーポータルZなどに記事を書いています

寄席メモリーズ 2024新春

1月 浅草東洋館1月初席 落語ファンをやっているからには1月初席は欠かせない。 浅草までひょいと電車に乗って向かう。 大好きな天どん師匠、ギリギリの人が出てきた危うさが魅力だと思うのだが、この日は客席の温まりが想定以下だったらしく、「どうしたんで…

寄席メモリーズ2023 秋冬

11月 さん喬・喬太郎親子会 落語家のホール公演には、共演者の関係に応じて「独演会」「二人会」「親子会」「一門会」などあるが、この日は初めての「親子会」。 渋谷の大和田さくらホール。 今年は1月の「喬太郎・三三」から始まり、かなり集中的に喬太郎師…

古久保-徳永研究室のこと

先日、僕の恩師である古久保-徳永 克男先生の退官記念パーティーが開かれた。 実はコロナ流行直前に先生は退官されているので、4年越しの念願が叶っての開催となる。先生も元気に喜んでくださって、本当にいいパーティーとなった。 僕は卒研生として1年間だ…

寄席メモリーズ 2023年9・10月

9月 池袋演芸場9月中席 私学中高教員の9月は文化祭で忙しい。こんにゃくみたいになるまで働いたあとの、やっとやっとの寄席。 この日は、「ここに行くしかない!」という顔付の寄席がどこにも無かったので、そうであるならば池袋に行く。池袋演芸場は全席SS…

山手線一周チャレンジ・完結編

昨年、秋葉原→池袋→目黒で一時停止していた山手線一周チャレンジ。のこり3分の1ぐらいを今後は逆向きに歩いて、完歩することにした。 秋葉原から線路沿いに神田川を渡る橋。子供の頃から歩き回っていた界隈だったけれどこんな橋があるのは知らなかった。 30…

2023上半期 寄席メモリーズ

育児のトンネルを抜け、昨年から始めた寄席通い活動。昨年はまだコロナ2類指定だったのもあり、TXで定期的に浅草に通うだけで精一杯だったが、今年はもっと狙いを持って活動の幅を広げることにしてみた。 1月 正月初席@東洋館 浅草の3階、普段は漫才やって…

あの頃の僕らが笑って軽蔑した神経痛

僕の父親は晩年、中程度のアルコール依存に陥り、家族はそれに悩まされてきたのだが、そもそものかけ違いは「神経痛」だったように記憶している。 定年後はバス旅行や山歩きに行きたいな、などと話していた父だったのだが、定年早々どっちかの足の神経痛を患…

鼻から胃カメラをやってみた

(ふつうの真面目な話です) 25歳ぐらいの頃の話。 社会人を始めたら胃を壊し、朝飯の食べられない日が続いた。医者に行ったらピロリ菌がめっちゃいっぱいいるということなので、除菌治療したついでに、胃カメラをやることになった。 世の中で医者の言う「と…

山田が死んで、もう4年になるのだな

この時期になると亡くなったあの人を思い出す、というのは誰しもあると思うが、僕にとって正月という季節は、4年前に亡くなった山田のことを思い出す季節だ。 山田祐資(やまだ・ゆうすけ)は大学の1つ下の後輩、2019年1月6日に難治性のがんが寛解せずに38歳…

ぼくが落語にはまるまでの道すじ

ここ2年、僕は急速な勢いで落語にはまり込んでいる。自分でも驚くぐらいだ。 「落語?……好きな人もいるみたいだねぇ……」という、2年前の僕みたいな人に、いったいどういう経緯で落語に人は凝り出すのかを記録しておきたいと思う。 寄席に行ったこともあった…

歩いて山手線、1周チャレンジ

「山手線1周を歩く」と「ことわざを実際に試してみる」は、平凡な企画のネタ例として双璧を為すように思うが、そうやって腐される割にやったこと無い人の方が多いのでは無いだろうか。 歩いて一周すると40kmを超え、並みの体力の人間ではそう簡単に完歩はで…

足首骨折・入院記録⑥最終回 どこまで運動ができるか

〜あらすじ3行〜・2017年3月、雪山で滑落して、右足首を脱臼骨折・手術してプレートを埋め込むも、1ヶ月半でプレートが細菌感染・緊急手術をおこなったのち、17日の入院を経て社会復帰 そして5年後の今、前からやっていた運動で、復帰することができたのは、…

とうとうおれも宝塚を見に行くのか

「宝塚」は文化趣味の中でも、もっとも男女間の嗜好差が激しいものかもしれない。 僕も宝塚出身女優は何人か知っていても、舞台自体を見に行くことについては、機会のニアミスを繰り返し、結局一度も無かった。興味の度合いは、その程度である。 しかし、こ…

昭和二十六年、祖父の贈賄容疑を探る(2009.10.15公開記事を再掲)

僕の祖父は名を加藤文吉といい、明治43年に生まれ、平成5年の僕が中学3年生のときに83歳でこの世を去った。もう16年前の話になる。 じいちゃんは質実剛健かつ豪放磊落な感じの人で、75歳まで会社で仕事をし、引退後は書道と囲碁を嗜んでいた。老人同士で集…

うっかりすると死ぬ、奥穂高岳3190m

登山はいつか規制されてしまいそうで不安がある。「死ぬかと思った」が比喩ではない世界。そして年に300人ぐらい本当に死んでいる世界。その妖しさが魅力でもあるのだけど — 加藤まさゆき (@masayukigt) August 17, 2022 44歳になって思うことは、「あと何回…

僕は記憶のカプセルになりたい

“雨ざらしなら濡れるがいいサ だってどうせ傘など持ってねェんだ 時が来たなら終わるもいいサ それが俺の最後の運命だったら” earstern youth『雨曝しなら濡れるがいいさ』 10年前、僕は死ぬことにあまり興味がなかった。子供もいない、持ち家も財産もない。…

40代になると「自然が偉大」とか思い始める

今年の冬はとにかく寒く、緩む気配を見せない寒波にうんざりすることも多かった。 それでも救いなのは、冬至を境に確実に日の長さと高さが増大していくことである。一日ごと伸びていく夕方の長さには少しでも期待を持つことができたし、冬至には庭のふちまで…

数奇な猫の最期と、干物を焼いた日のこと

もう3年ほど前になるが、実家のマンションで飼われていた猫が13年の命を終えた。 亡くなる数日前。当時2歳の長女とともに。 学生時代からアパートで幾多の猫を飼い、さまざまな生涯を見てきた僕だけど、この猫の生涯は数奇であったなあ、と思うところがある…

足首骨折・入院記録⑤ プレート細菌感染・後半

■その1→【足首骨折・入院記録①初日~3日目 群馬での入院 】 ■その2→【足首骨折・入院記録②4日目~8日目 手術までの日々】 ■その3→【足首骨折・入院記録③9日目~13日目 手術から退院まで】 ■その4→【足首骨折・入院記録④ プレート細菌感染・前半】 …

とうとう落語(というか志ん朝)にはまっている

ここ最近、ツタヤで古今亭志ん朝の落語のCDをひたすら借りている。ちょっとしたきっかけがあってすっかり惚れ込んでしまった。 1月からずっと亡くなった叔父の遺品整理をぼつぼつしているのだが、そのなかに古今亭志ん朝のCDが1枚あった。叔父の家まで高速で…

加藤家の世界線、概念としてのプリキュア

5年前、子供が生まれたとき、 「もし今後、家の中では僕が創造した人造言語だけを使うようにしたら、この子はその言語のネイティブ話者になるのだろうか?」 などとくだらない妄想をしていたものである。 実際そんなことはもちろんしてないわけだが、そこま…

無関心は体育のテストを変えない。

『とある「社会問題A」に関して、ある人の表す態度が「沈黙」「無関心」であった場合、その人は問題Aに対して強者の立場にいる人である。』 という原理を、根が深いなと最近感じることがある。 というのも、先日、中学生が人種差別問題についてプレゼンテー…

読書レビュー『科学者の冒険』

それほど生物科学のニュースに平素から目を通していない人でも、「クジラとカバが同じ仲間であることが最近明らかになった」ことぐらいは何かの折に聞いて知っているのではないだろうか。 それを明らかにしたのが岡田典弘先生だ。筑波大学・東京工業大学で研…

一回も転ばなくても子供は自転車に乗れる。あと補助輪は悪。

子供(4歳前半)を自転車に乗せることに成功した。一回も転ぶことなく。 僕は運動にまったく才能がないため11歳ぐらいまで乗れず、子供時代の自己抑圧的な性格を生む原因のひとつになったので、自分の子供が自転車に乗りおくれないようにすることは育児にお…

行列のできない高校物理教員

教員として日々子供たちの学習に携わりその気持ちに寄り添っていると、蓋然的に、自分が中高生だった頃の気持ちも多少思い出しながら指導に当たることになる。 そして今となってはどうでもいいのだが、時折ふッと「ああ、おれ本当に数学ができなかったよなあ…

おれたちの耐用設計年数

昨年1年間、毎日やりきったことといえば猫への点滴である。 飼い猫が11歳になり、腎臓を悪くして毎日点滴をしなければいけなくなったのだ。昨年2月から土日祝日も含めて一日も休むことなく、点滴を続けてきた。 調べると、猫の腎臓というものはだいたい7〜8…

30代でお金をかけるようになったこと

僕は29歳のちょうど終わりの月に結婚したので、ちょうど30歳からライフスタイルがぐっと変わった。それから10年、意識的にお金をかけたなと思い出すことをちょっと記録したい。 1.コーヒー ドリップバッグのコーヒーは冷めると急激にまずくなるのが納得いか…

『極夜行』にシビれまくっている

仕事で極夜(白夜の逆)のことを調べているうちに『極夜行』という本に突きあたった。冬の北極圏の極夜の中を数カ月にわたって単独行をした探検家のノンフィクションだという。 極夜行 作者: 角幡唯介 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/02/09 メディ…

ヌルデが生えてきたぞ

先日、林さんと大北さんの記事で雑草担当として記事に出演してきた僕だが、記事のとおり基本的に植物好きなので、昨年買った自宅の庭も、植物が主役になるようにあれこれ工夫をこらしている。 荒地の分譲地を耕して1年目にしてはまあまあ良くできた。 草む…

子どもの言語2

「こもど」 子供が小さく単語の音を入れ違えて言ってしまうというのはよくあるという話で、うちの子供も堂々と「このイス、こもど用?」などと言っている。(もちろん正しくは「こども用」) 他にもいくつかそういう単語はあったのだが、「こもど」だけはい…