まさゆき研究所

ライター・加藤まさゆきのブログです。デイリーポータルZなどに記事を書いています

2023上半期 寄席メモリーズ

育児のトンネルを抜け、昨年から始めた寄席通い活動。
昨年はまだコロナ2類指定だったのもあり、TXで定期的に浅草に通うだけで精一杯だったが、今年はもっと狙いを持って活動の幅を広げることにしてみた。

 

1月

正月初席@東洋館

浅草の3階、普段は漫才やってる会場で行われてた会。
喬太郎トリを初めて見る。
天どん師匠の、何をやらかすか分からない危うい雰囲気を初めて味わい、衝撃を受ける。最初は本当に「すれすれの人が出てきたんじゃないか!?」と驚いた。

 

正月顔見世@浅草演芸ホール

落語協会の新年顔見せ。
「なるほど、こういうものなのか〜」と感心。

 

1月31日 喬太郎・三三 二人会@サンパール荒川

堀ノ内/三三  時そば喬太郎  午後の保健室/喬太郎  転宅/三三

初めてのホール落語。
小春日和だったので、三ノ輪〜南千住の界隈を散歩。史跡「小塚原の刑場」など。
ホール落語は普段行かない駅に行くきっかけになるので楽しい。
子供が生まれる前に、取材やライブやマラソン大会で方々に行っていた頃を思い出す。

 

3月

3月上席@浅草演芸ホール


2月から一之輔が笑点メンバーになったが、寄席で見たことが無いなと思って向かう。
小ゑん師匠の演目「ぐつぐつ」が、めちゃくちゃエッジ効いててすごかった。
寄席は、気楽に行ってみて、うっかりノーガードですごい芸を喰らった時の感動がたまらない。

トリは代演で雲助師匠。人間国宝おめでとうございます。
写真は「ドキュメント72時間」で見て、前から食べてみたかった三ノ輪の特大コロッケパン。

 

4月

4月上席@浅草演芸ホール

伯山主任の浅草。
昼から向かって整理券をもらい、夕方まで寺や神社まわったりしてぶらぶらと時間をつなぐ。
文治師匠の「平林」、遊雀師匠の「つる」。
どちらも前座話と思っていたが、演者の腕でこんなに面白くなるのか!と、改めて噺家の力を感じた会だった。
それ以外も前座からトリまで、誰一人として気の抜きどころの無い、完璧な寄席の1日だった。伯山は「中村仲蔵」。終演後からカーテンコール、さらに出口の出待ちまで、どこまでも鳴り止まない拍手が心に焼き付いて離れない。

 

5月

浪曲定席@浅草木馬亭

浅草でもこの日は木馬亭浪曲の定席。
昨年12月の伯山主任の末廣亭で見た玉川奈々福、玉川大福の浪曲が、これまたノーガードで見ていた僕の心に刺さってしまい、これはいつか行こうと虎視眈々と狙っていた。

受付で「ここは落語じゃ無いですよ、浪曲ですよ?」と念を押されたのが、なんともおかしかった。

 

5月中席@国立演芸場 江戸家猫八襲名披露

赤坂・国立演芸場へ。
秋で建て替えになってしまうため、今のうちに行かないと二度と見られなくなるので焦って向かう。
落語を聴き始めていろいろ知ると、今からでは間に合わない多くのものを逃してしまっていたことに愕然とすることが多い。僕は人間国宝柳家小三治師匠も、落語会の革命児・三遊亭円丈師匠も見ることが叶わなかった。
少しでも取り戻すべく、ヨセカツをすすめて行きたい。

 

6月

6月上席@池袋演芸場

唯一未攻略だった定席であり、落語会最深部とうわさされる「池袋演芸場」へ初挑戦。
客席と高座の、信じられないほどの近さに目を丸くする。
マイクは無く、全て肉声。
落語の「一人演劇」としての性質がいやというほど露呈する、驚くべき会場だった。
これは中毒になる。

また楽屋舞台袖とロビーがほとんど一体化しているので、他の寄席以上に演者と観客の垣根が無い。寄席に足を踏み入れたら、目の前で「ロケット団」さんの二人がソファでスマホをいじりながら出番を待っていた光景は衝撃だった。

春風亭一之輔独演会@取手市民会館

真田小僧天狗裁き/竹の水仙

僕の住む茨城にも、たま〜に落語の独演会がやってくることがある。
折良く平日が休みの日に一之輔師匠の独演会があったので、逃さずに参加してきた。
秋には伯山も来てくれる。ありがとう取手市

 

7月

7月上席@浅草演芸ホール

なんと家族3人での寄席観覧。

喬太郎が見たい」
小2子供紙切り笑点メンバーが見たい」
「小朝が見たい」

の思惑が全員一致するという奇跡的な顔付けの番組。

子供は、小2にしては物語の理解力がある方だが、落語はさすがにちょっと難しいようである。それでも一之輔の動きのある落語には大笑いしていた。

前から3列目に家族で座ったので、師匠方に「幼い子供がいるぞ」という圧をかけることになっていないか心配だったのだが、たい平師匠は演目「禁酒番屋」に小学生にウケるアレンジを入れてやってくれ、これにも爆笑していた。

加藤家における、たい平師匠に対する好感度が爆上がりになった1日。


こども、念願だった「注文紙切り」をゲット(楽一師匠)

 

江戸東京落語まつり@日経ホール

落語ファンが総立ちになる、超豪華ラインアップ。
ぴあとeplusを見てきて一番チケットが取れない落語家だった、立川志の輔師匠をようやく見られたので、それだけでも十分。
さらにNHK新人大賞・立川吉笑「ぷるぷる」、女性初の抜擢真打・つる子の「反対俥」など実力派二ツ目も見られ、これ以上は望めない充実のホール落語だった。

 

伯山プラス(神田伯山月例の独演会)

伯山/海賊退治・雨夜の裏田圃  神田伊織/吃の又兵衛

昨年末にチケットが当選するも、悪いタイミングで家族がコロナになり、泣く泣く諦めた「伯山プラス」が、7月にようやく当選。演劇好きな小学校の頃の友人と向かう。

友人は伯山の独演会を開催する側の仕事をしたことがあり、とんでもない殺到ぶりに苦労したらしいのだが、この回でその芸を見てすっかり納得したとのこと。

 

7月余一会@浅草演芸ホール

本当は家族旅行があった日だったのだが、家族の急病でキャンセルに。
手が空いてしまったので、余一会(31日がある月に開催される特別な寄席)に行く。
会派の関係で、浅草では原則見られない円楽一門会が登場する「三遊落語まつり」。
兼好師匠は初めて見て、現物の芸の素晴らしさに目ん玉ひんむくような衝撃を受けたのだが、それを至近距離でまた味わうことができてよかった。
そして天どん師匠はほんとうに危うい。

 

8月

8月上席@池袋演芸場

一度ですっかり中毒になってしまった池袋演芸場へ。
権太楼師匠のトリを初体験。
初めて見た菊志ん師匠、という方がすごくうまい。調べたらNHKの新人大賞の受賞歴。
まだまだ知らない落語家さんがたくさんいて、世界の広さ深さを思い知る。

 

8月中席@浅草演芸ホール「住吉踊り」

恒例で開催されているという「納涼住吉踊り」が目当て。
6月ぐらいから専門月刊誌「東京かわら版」を定期購読するようになり、こういう「落語会ではこれが季節行事」というものも理解が深まってきた。
志ん朝から落語に入った僕としては、「志ん朝が始めた行事」というこの踊りをどうしても見たかった。
偶然にも喬太郎が代演で大トリだったので、夜まで落語も楽しむ。

 

「よこはま落語会」 露の新治・兼好・喬太郎

関東ではめったに見られない、上方落語の「露の新治」師匠が来るというので、ずっと前から注目していた会。
いつも登山をしてきた友達たちと見に行く。
そろそろ僕も少しずつ他人に勧められる落語というものがわかってきて、喬太郎・兼好、ともに気に入ってもらえたようで嬉しかった。

そして露の新治師匠の大ネタ「大丸屋騒動」。AppleMusicで何度も聞いていた憧れの演目だったので、これは生で聞けたのはまたと得ることのできない貴重な感動体験だった。

 

1〜8月までに13回行ったが、まだまだ知らない世界が多い。講談の定席も聞けていないので、下半期も引き続き頑張っていきたい。

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