僕は都内出身なのもあり、休みの日のお出かけはどうしても都内方面に足が向いてしまう。
それでもひとつだけ、茨城県内でリピートしてしまうのが笠間市の「茨城県立陶芸美術館」だ。
茨城県陶芸美術館

笠間市は、「笠間焼」と言われる陶芸で人気を集めている市だ。
つくば市と水戸市の間あたりにある公共交通機関の不便な場所で、車がないとなかなか行けないのだが、ここにある陶芸美術館は県内でも随一の展示の美しさとクオリティがある。
生徒引率行事で行ったときに不意を突かれて感動してしまい、その後かみさんを連れて行ったがその感動に共感してもらえて、以来、子供が生まれてからも定期的に通っている。
ぼくは、それまで陶芸という分野を甘く見ていた。

ただお茶碗や壺を作るだけでなく、表現素材としてこんなに幅広く魅力的なものだと思っていなかった。
裂けて、割れて、光り、うねる。
陶という永続的に残る素材でありながら、こんなにも自由。
陶芸の可能性に挑戦しているクリエイターたちの現在地を露わにしようという意気込みをこんなにも感じたことは、他の博物館では一度もなかった。

さて、今回紹介しているのは1/26まで行っている現代若手陶芸家の作品展だ。
以前は「日本陶芸展」という巡回展の会場の一つになっていて、これが本当に良かったのだが、事業自体が終了してしまった。
しかし久しぶりにこの意欲的な展示がやってきて、一家で迷わず駆けつけた。

織部焼を出している作家さんもいる。
その造形の力強さや釉薬の色の深さは、心の奥にぐっと入り込んでくるエネルギーがある。

娘(8歳)が最も気に入っていた作家さん。
目を離せない吸い込まれるようなドットの配置なのに、ずっと見ていると脳が歪みそうになる。ミュージアムショップで19800円で作品も売っていた。
ここのミュージアムショップは全体に趣味がよく、行くと必ず一つは買ってしまう。
またポイントが高いのが、付属のそば屋が異常に美味い、ということである。
ふつう、美術館付属のレストランなんてそんなにレベル上げなくてもいいと思うのだが、なぜかどのメニューを頼んでもやたら高いクオリティに仕上がっていて、異常にうまいのである。

子供がモチを食いたくて頼んだ力うどんセット。モチが揚げ餅になっていて、汁を吸うととてもおいしい。
器は当然すべて笠間焼で供されるのだが、そこも高ポイントである。
なお、常設室は「板谷波山」という国宝作家の「練上」という技法の壺が多数展示されているのだが、こちらも確実に期待を上回る作品群なのでぜひ見てほしい。
笠間その他の見所
自分で陶芸を作ることもできる。体験工房が林立しているので、どこを選んでも楽しめるが、おすすめは「ろくろ」で作るタイプのコース。
普通に自宅で使うのに差し支えないクオリティのものが作れるのでとても楽しめる

(これはろくろではなく「手びねり」作品)
日本有数の栗の名産地で、栗の季節には多くの人が道の駅に栗を買いに来る

その栗を使ったモンブラン。
僕はケーキはあまり好まないが、モンブランだけは好きなので、このときは娘やかみさんに合流して栗よ栗よと楽しんでいる。特級品の栗で栗おこわを蒸すのも楽しい。
その他「笠間稲荷」というなかなかに渋い神社などもあったりして、見どころが多い。茨城の観光地の中でもっとも洗練された観光地の一つだといってもいいと思う。
唯一残念なのは、「都内からの電車のアクセスが異常に悪い」という点なのだが、おかげで混みすぎることがないので、これもいい点かもしれない。
春秋のしっとりしたお出かけに笠間市、僕の一押し観光スポットである。