まさゆき研究所

ライター・加藤まさゆきのブログです。デイリーポータルZなどに記事を書いています

柏に住んでいたころのこと

そろそろいよいよ僕も30代でなくなってしまうのだが、最近なんとなく、柏に住んでいたころのことを思い出す。

僕は27歳の頃、1年だけ柏に住んでいたことがあったのだ。

 

 

このあたりのアパートだ。

東武野田線柏駅豊四季駅のちょうど中央あたりで、モロに線路沿いだっため、始発電車の音で毎日目が醒めるという、健康だかそうでないんだか分からない立地だった。(電車好きなんでいいんだけど)

住んだのは社会人になって4年目ぐらいだったのだが、社会人になりたての頃よりも、この頃のことの方が「あの頃若かったなー!」という気持ちとともに思い出される。

1年だけだったけれど、僕はこの町で充分に生活しきったなと思う。

 

街並みがよかった


近くにあった豊四季団地

 

僕はもともと街の民なので、どちらかを選べと言われたら間違いなく都会暮らしを選ぶタイプだ。しかし学生時代から9年間、つくばで安穏と暮らしていて、「このままではさすがにヤバい」と謎の焦燥に駆られ、半ば衝動的に引っ越した。

住むなら可能な限り街の方がいいなと思って柏を選んだ。

柏の街の混み込みした感じは僕の理想にほどよく、車通勤生活を満喫しつつも、街の暮らしも楽しむことができた。アパートの駐車場が妙に広く、バイク停めたり、友達の車をしばらく停めたりしてても大家さんはOKだった。

近くに豊四季団地といういい感じにひなびた団地もあり、陽射しのいい日はそこの写真を楽しむこともできた。

総じて、街に暮らしたいという気持ちは充ち足りたように思う。

 

ランコースがよかった

柏には大堀川という細い川が流れていて、その土手を毎日ジョギングした。

柏の市街から、国道の下を通り、最後には隣駅「北柏」のホーム近くまで伸びていて、変化のある面白いコースだった。

昼は川面の照り返しの中を、夕方は散歩する飼い犬に混ざり、夜は北柏駅のホームに往来する電車を眺めて、毎日毎日飽きることなく走った。

6月ごろ、仕事が昼で終わりになったので、喜んで帰って、午後3時ころジョギングに出たことがあった。

ほどよく走ったところで急ににわか雨が降り出し、熱しきったコンクリートに落ちた雨粒はあっという間に湯気となって、あたりは蒸し切った空気に包まれた。大粒の雨を浴びながら、草と道路の臭いが入り混じったむわーんとする空気の中を走り抜けたあの時の、「あー、俺生きてる!」という、生々しさに満ちた感触は今でも忘れられない。

いまにして思えば、つくばという閉塞的な環境から、見知らぬ街へと抜け出た開放感の象徴であったのかもしれない。

この川沿いのコースことは、今思い出してもむずがゆくって、こそばゆい。

 

友達と同棲した

友達が休職生活から復帰するために関東に帰ってきたものの、住む当てが外れてしまったため、僕の家に転がり込んできた。アパートは2DKなので、僕としてはとくに支障も無い。

というわけで予想外の2人生活が始まった。

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趣味が似ているので毎日楽しかった。2人でジョグをして、2人でバイクの整備をして、そしてツーリングにも行った。2人で住んでいるので、そのまた友達も遊びに来てくれて、生活は賑やかだった。

友達と同棲するのだけは、絶対に若いうちかしかできないからやっておきな、と人生の先輩に言われたことがあったが、実際ものすごく面白い体験だった。帰ってくると大鍋一杯の豚汁(10人前ぐらい)ができていたりするのもファンキーで良かった。(単に彼が面白かっただけかもしれないが)

実質3か月ぐらいで終わってしまった生活だったが、柏での思い出に何かサイコー感があるのは、あの3ヶ月があったからだと思う。

 

これ以外にも都内に遊びに行きやすくなったのでライブに行くこともぐっと増えたりと、活動性の増した期間だった。だが、同棲生活が終わってしばらくすると、柏自体には友達がいないため、週末ごとに都内に出ることになり、「結局都内に行くのなら、柏でなくてもいいのでは」と思って、元の茨城に引っ越してしまうこととなる。

しかしそれでも、「見知らぬ街」にしっかりと住んだあの1年間は、僕の人生とってまちがいなく必要なものだったよなと、今でも確信することができる。