まさゆき研究所

ライター・加藤まさゆきのブログです。デイリーポータルZなどに記事を書いています

2015年と俺の綿の木

2015年は公事・私事ともに激動の年だったのだが、そういうこととは別にして、綿の木を育てたことが静かに深く心に残っている。

 

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引き出しに何年も入れておいた綿の種を何となく植えてみたら、旺盛に葉を広げて予想外にめきめきと成長し、さいごには僕の背丈ほども大きくなった。

まさに圧倒されんばかりの勢いだった。

 

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夏になると綿は白い花を咲かせる。咲いてすぐは真っ白いのだが、1日ごとにうす赤く色あいを変えていく。それが不思議だったし、また、その色づき方がとても繊細で美しく、毎朝窓を開けるのが楽しみだった。

 

f:id:masayukigt:20160101214747j:plain夏になると綿の葉の上にいつもカエルがいた。

カエルは不思議な生き物で、住む場所なんて考えてないように思えて、とつぜんベランダに長く住みつくことがある。一度居つくとすると2か月ぐらいはずっと同じ場所にいる。

毎朝、綿の花の色とカエルの居場所を確認するのが僕の夏の日課だった。

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花が終わると綿は大きな実をつける。

緑の実がむくむくと膨らんだあと秋になると割れて、一度は見たことのある、あの「綿の実」の状態になった。

台風にも負けないよう添え木をするなどして丁寧に世話をした結果、写真にあるような見事な綿ツリーを手にすることができた。

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綿を「見るもの」として認識してしまい写真はあまり撮らなかった。あまりの生命力に圧倒されたせいかもしれない。でもその分心に深く残った気がする。

もし来年、何かベランダで育てたいなと思っている人がいたならば、綿の木を育てることをおすすめしたい。

へうげもの、ほか

ものすごく面白くて大好きな作品なんだけど、新刊が出るたびにストーリを追うのが大変なので、新刊が5冊くらい溜まってから読もうと思っている作品のひとつ『へうげもの』を20巻まで読んだ。

すごい、テンションが全然落ちていない。

信長が、利休が、そして秀吉が死に、関ケ原も終わり、戦国の主要イベントは全部終わったのに、それでも読ませるこのキャラクターの強さ。ニューキャラ「帝」の立ちっぷりがまたすごい。ここまでキャラを立てつくした後にまたあのキャラを立ててくる作者の力。

そして清正の最期のシーンが最高すぎる。ありえない、ありえなさすぎる。

マンガの旨みが全部詰め込まれ切ったかのようなこの作品のパワーには本当に驚嘆させられっぱなしだ。

と思ったら新刊が出てた。

読みたい。もういっそ今さらでも全巻買って、1巻から何度でも読み返そうかという気持ちになる。

作品の根底にある「歴史のつめたさ」に対するまなざしも心に深く突き刺さるものがあり、さいきん「家族愛」だの「女性の自立」だのという生っちょろいテーマに傾倒しがちなNHK大河ドラマさんはこの作品を読んで、いま一度居住まいを正してほしい。

 

その他、新刊溜まり待ちの作品 

ヴィンランド・サガ(16) (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ(16) (アフタヌーンKC)

 

→農場編になってから激アツの展開に泣く。

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

 

 →姐さんと結婚する決意の心理描写がやや不足してて少し醒めてしまったのだけど、そんなこと気にならないほどに大期待。

 →連載再開しないんかなあ……

俺のからだに訪れる人体の不思議

32歳から37歳にかけての5年間で、僕のからだは驚くべき老化を果たしている。

が、特に悲観はしてない。おととし亡くなったばあちゃんは、目が見えなくなっても歩けなくなっても「年取るって不思議ねぇ、不思議不思議!」と全く意に介して無かった。で、そのまま老衰で死んだ。

さすがである。僕もそれを手本に加齢していこうと思っている。

 

1.酒を飲むと寝られない

32歳の頃までは日々元気よく酒を飲んでおり、むしろ飲みすぎて朝起きられなくなるのが悩みだったが、いまではそれが全く逆である。酒を飲むと寝られなくなるのだ。

具体的に言うと、夜中2時ころにハタとに目が覚める。たいていそのまま出勤し、睡眠不足で仕事にならなくなる。二日酔いの気持ち悪さもなんか倍増し始めていて、酒も飲まなくなってしまった。

 2.飯が食えない

吉野家の並盛が多い。おにぎりも一個でいい。もっとダイレクトに数値で分かるのは回転ずしの会計額である。今はいくら食っても2000円を越えられない。

30代になったころは「太りやすくなったなー、何食っても太るなー」と悩んでいたが、これも今や逆で「そもそも太るほどたくさん食えない」域に達してしまった。人生、逆転の連続とはこのことか。

3.目が疲れる

子どもが「肩こり」を理解できないように、僕も長年「目が疲れる」を理解できなかったのだが、最近ようやく分かった。これか。目を閉じてしんみりしている時間のなんと幸せなことか。(きだてさんいわく「それ、老眼の前兆だよ」とのこと。ひー!)

うっかりするとそのまま永眠しそうになるので、ここは疲れても勢いよく「天魔降伏!」とか言いながら目を開き、セブンセンシズを開放させるなどの活動を続けていきたいと思うところである。 

4.前髪の伸びが悪い

もう全てである。

前髪が、一定以上に伸びないのだ。若い頃はあごぐらいまで伸ばして憂鬱げな文学青年を気取ったのに……。オオサカ堂に頼る日も近い。

 5.謎の難聴

これも以前書いたけど、今ではからだのむくみが原因だなと分かってきたので何とかなっている。が、深酒すると一瞬で再発するので、もう人生で二度と深酒はできないなと覚悟を決めている。

 

で、もっと驚くのが、こんなに身体の勢いが落ちているのに人間ドックの結果はほぼ「A」なのだということだ。これでAなのか。

年の行ったひとたちが「B」だの「D」だの話し合っているが、どんな体になったらそんな結果が叩き出せるようになるのだ。

まだまだ人生の続く不思議に心を躍らせている。

主人公が暑苦しい

最近やってる『うしおととら』のアニメ見てみたんだけど、なんか、うしおが暑い。暑苦しい。中高生の頃、熱心にマンガ読んでた身としては「こんなだったかなー?」みたいな感想を持つ。  

 そして「運命なんてもんはな……自分で変えられるんだよ!」とか熱く語りまくるそのキャラを見て、なんか『天外魔境2』の戦国卍丸みたいだなと思った。ほぼ同時代の少年ヒーローだ。 

天外魔境2 卍MARU 【PCエンジン】

天外魔境2 卍MARU 【PCエンジン】

 

 そうか、この時代(1992~94年ぐらい)の少年向けヒーローはこのキャラが王道だったのか。

自分だったらいい加減食傷気味になって、もう少し醒めた感じのヒーロー見たいけどなあ、と思って思い出したのがエヴァンゲリオンだ。碇シンジくんだ 

 これがたしか1996年。

僕はアニメに対してそんなに熱が無いので、リアルタイムでは見ていなかったけど、いま思うとこれは、あの暑苦しさ全開だった主人公像へのアンチテーゼだったんだな。当時はさぞ新鮮だっただろう。

そして「世界を救う」の戯画化がここから始まったことも考えると、やっぱりこの作品は偉大だったのかもなあと今さらにして思い直している。

タラレバ娘・ゴーストアンドレディ・コウノドリ

『東京タラレバ娘』が引き続きおもしろい。 

 東村アキコさんは、言うまでもなく日本屈指の漫画家さんで、何読んでも面白いんだけど、たまに途中でとつぜんストーリーが失速することがある。

タラレバも3巻まで読んで、「もしかしてここまでが絶頂かも?」と思わせる雰囲気がちょっとあったが、全くそんなことはなく4巻でも鈍ることのない素晴らしい伸びだった。

東村さん独特のコミカルさとシリアスさのバランスも絶妙で、細やかな感情を丁寧に描きだすその筆力が惜しみなくアウトプットされている。

ひまわりっ!』の、意地悪のセツ子が突然チキン南蛮について語り出すあのコミカルさ、『かくかくしかじか』の、日高先生にマンガで稼いだ金で絵画を描け!と言われたあとのアキコの表情。どの作品を読んでいても、心に温かい風と冷たい風が交互に吹き込んでくるような魅力がある。次が楽しみだー。

 

 さて、東村さんと同じく、話題の番組『漫勉』に取り上げられていた藤田さんの作品。

友達に借りたゴーストアンドレディ。

うしとらが絶頂だと言われて久しい藤田さんだけど、この作品はめっちゃよかった。得意技である最後の伏線回収には思わず涙をこぼしてしまったぜ。

最近「サンデー」への復帰を発表してたけど、こういう「モーニング」らしいテイストに仕上げられた藤田さんの作品もいいものだと思った。ぜひまた読みたい。

 

最後に、そのモーニングの話題作と言えば『コウノドリ』。 

コウノドリ(12) (モーニング KC)

コウノドリ(12) (モーニング KC)

 

僕はもう、あまりに長年モーニングを読んできたせいか、モーニングぽいマンガを少し斜に構えて見てしまうところがあるんだけど(『グラゼニ』とか『宇宙兄弟』とか)、コウノドリはそこからまた新しいものを見せてくれた感動があった。

生誕と死が隣り合わせにあるという産婦人科の特異さを、綿密な取材に基づいて本当に丁寧に描いている。モーニングっぽい「仕事ってこんなに素晴らしいね!」的な押し付けがあまり前に出過ぎず、読みやすい。

ドラマの最終回にも取り上げられた「死戦期帝王切開」の話は本当に圧倒的すぎて、全身の毛が逆立つほどの迫力だった。産婦人科にしかできない究極の蘇生手術。中二病っぽいその名前も気持ちをそそるところがあり、まさに日本マンガ史に残るレベルの「読まずに死ねるか!」というシーンではないだろうか。

この作品もまだ続くというので、期待が高まっている。

ことし面白かった記事

portal.nifty.com

デイリーポータルで今年のベスト記事が発表されていた。

今年もあい変わらずデイリーポータルは面白く、ほんとうに感服してしまう。僕の書いた記事は特に入っていないが、手伝わせてもらった進化寿司の記事は3位に入っている。うれしい。

 

さて、それ以外のメディアでぱっと思い出すのは、オモコロのこの記事は本当に面白かった。

omocoro.jp

このあと、たまたま行ったデイリーの会議で生実演を見ることができたのだけど、その圧倒的なパフォーマンスにしびれた。この徹底的に意味の無いことにフルスイングできるウェブメディアってのは本当に素晴らしい。

ぼくが中高生の頃に、深夜番組や雑誌が受け持っていた領域がそのまま今はWebに移行しているわけだけど、そんな当時憧れだったような場に身を置けているのは本当に嬉しいことだと思う。

科学の力で実現するホワイト・クリスマス

デイリーポータルに記事を書きました。

portal.nifty.com

 

すごいぞ、はてなブログ、ここまで頑張ってFC2で書いてきた自分がバカかと思える便利さと書きやすさだ。

しかし、かつてFFFTPでサイトを更新していたころからすると隔世の感である。

最初ブログが出だしたころ、「こんな簡単にサイトに画像が載せられる!」と感動したものだが、そのあとFC2ブログが出てきたとき、「再構成かけなくていいのか!便利!その他いろいろ便利!」とさらなる感動を覚え、これ以上ブログは進化しないんじゃないかと思っていたら、はてブロのこの書きやすさである。

デイリーポータルはちょっと休筆してしまうのだが、そのあいだも書く感覚無くさないよう、昔みたいにブログ更新していこうと思う。