まさゆき研究所

ライター・加藤まさゆきのブログです。デイリーポータルZなどに記事を書いています

足首骨折・入院記録⑤ プレート細菌感染・後半

■その1→【足首骨折・入院記録①初日~3日目 群馬での入院

■その2→【足首骨折・入院記録②4日目~8日目 手術までの日々

■その3→【足首骨折・入院記録③9日目~13日目 手術から退院まで

■その4→【足首骨折・入院記録④ プレート細菌感染・前半】

 

プレート抜去の終わった僕は、その後3週間の入院生活を主治医に命じられることになる。

「長い」
「ありえない」
「本当か……」

というのが率直な感想だったが、主治医の目が1回目のときより数段本気だったので、何も言えなかった。

 

体内に細菌感染が発生しているというのは、ただの骨折より数段やばい状況であるらしく、感染ショックが起これば容体急変から死に至ることもあるらしい。前の入院の時は術前に多少の外出も許されたが、今回の入院は完全に外出禁止である。

妻と1歳の娘、そして仕事の穴を空けてしまった職員室、すべてを置き去りにして僕は病院で3週間、茫漠とした時間を過ごすこととなった。

 

その時の記事はこちら

 

3週間、いったいどのような処置を受けたのかといえば、1日3回、8時間ごとの抗生物質を点滴されること

基本的にはそれだけである。僕も「これ、アパートから近いんで1日3回受けに来ますから、通いでなんとかなりませんか……?」とダメ元で言ってみたのだが、言ったとたん主治医の目が仁王像のようになったのですぐさま前言撤回し、それ以上の発言はやめにした。

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あきらめて点滴、点滴、点滴、の日々
真夜中の血だらけ事件

朝6時、昼2時、夜10時。
1日3回、星辰の進行のように規則正しく点滴を受ける。

夜の10時が不思議だ。
病院は夜の9時に消灯なのだが、消灯後、真っ暗になった1時間後、看護師さんがそうっとカーテンを開けて「失礼しまーす」と入ってくる。
ごく一部を限定的に切り取って解釈すれば色っぽい雰囲気もないことはない流れだが、実際にはもちろん何もない。そのあと30分点滴を受けるだけである。

いちど、この繰り返しがあまりに暇だったので、夜の点滴が終わった後、管が抜かれる前に腕を上げ下げして管の中を血が行ったり来たりするのを眺めて遊んでいたことがあった。
そしたらいつのまにか血が変なところまでに吹きこぼれてて、看護師さんが大慌てになり、数人集まって「放置してすいません、すぐ片付けます!」と後始末してくれたことがあった。

もう5年経ったのでそろそろ謝ろうと思います。
申し訳ありません。
アレはいい歳して訳のわからないことをした、100%僕の責任です。
看護師さんすいませんでした。

 

ドレーンの袋を収納する、たったひとつの冴えたやり方

血と言えばもう一つ。

入院前半は、「ドレーン」という術部から血を吸い取るための謎の小袋をぶら下げたまま生活することにもなるのだが、これが絶妙に邪魔である。

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ドレーン。陰圧をかけて患部から汚れた血を吸い出す

これを収納するためのポシェットのようなものももらえるのだが、点滴の道具や松葉杖と絶妙に干渉するので、どうにも収納しあぐねていたのだが、ある瞬間ピンとひらめき、ジャージのパンツ裾を大きく折り返し、その中にしまうと生活がうまくいくことを発見した。

こんな便利な方法あるんだったら看護師さん早く教えてよー、ぐらいの気にはなったのだが、じっさい看護師さんが僕の収納を見て苦笑い気味に言ったのは

「そんなしまい方している人初めて見ました。あたらしい!」

というコメントだった。

昔からのことだが、僕が「いい発明した!」と本気で思っていたる工夫は、人に笑われることが多い。
だからデイリーポータルのライターに向いていたのかもしれない。

 

退院まで

ドレーンは1週間ほどで外され、骨もうまくつながってゆき、17日間でちょっと早く退院することが許可された。

主治医の先生は常に冷静沈着で、医師としての激務を笑ってこなす素晴らしい方であったが、僕が感染して再入院となったときだけは、さすがに落ち込んでおられた。
感染が起こる確率は高いものではなく、特に僕のように当時30代だった抵抗力のある人間にはあまりないので、起きてしまったのは先生としても意外中の意外であったのかもしれない。
僕の生活の仕方に問題があったのだとしたら、それは少し申し訳なかったと思う。

退院後、僕はもう装具はつけなくてもいいと言われ、走りはできないものの、歩くことに関しては難なくこなして暮らせるようになった。

次回は、それから5年後の今(2021年)まで、どのようなところまで運動や生活ができるようになったのかを書いてみたい。

masayukilab.hatenablog.jp