まさゆき研究所

ライター・加藤まさゆきのブログです。デイリーポータルZなどに記事を書いています

エッジの効いた名前

僕の人生にまつわる記憶の中で「エッジの効いた名前だ!」と初めて思ったのは、小学校3年生のときに転校してきた「タモンちゃん」だ。

タモンちゃんは本名を「阿曽沼 多聞」といい、そもそも阿曽沼というインパクトのある珍しい苗字をしているうえに、下の名前は「多聞」である。
「聞く」という字のはじめて見る読み方に全員が衝撃を受け、自己紹介の瞬間にみんな一発で覚えたと思う。

しかしタモンちゃんの親もすごい。
名付けの本なんかには「難しい苗字には簡単な名前を合わせるほうがいい」などと書いてあることもが多いが、そんな日和った意見など気にせず、堂々と「多聞」である。男らしい。

さらに言えば、苗字「阿曽沼」は転校して早々、クラスの出席番号1番になったため、いきなり名簿の先頭に並んだ、という意味でもインパクト大、とにかくエッジが効きに効きまくった名前で、あれから30年経った今でも「珍しい名前」という話題になると、真っ先にタモンちゃんの「阿曽沼 多聞」が頭の中に浮かんでくる。

タモンちゃんは創作のホラー話を次々と語ったりするひょうきんなキャラで、あっという間にクラスになじんだ人気者だったが、惜しいことに1年でまた別の小学校に転校していってしまった。

それからタモンちゃんの消息を知るものは誰もいない。
が、この間ふと思ったのである。

これだけエッジの効いた名前であれば、グーグル検索すればさすがに出てくるのではないか、と。

 

出てきた。

mof.go.jpなので、財務省にから出ている文章だろう。写真も載っている。もちろん大きく変わっているが、ほんのりとあの頃の面影がある。
そして著作のプロフィールを見るとこう書いてある。

 

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阿曽沼多聞(あそぬま たもん)
国際通貨基金IMF) エコノミスト
2003年慶應義塾大学経済学部卒業、2005年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2011年ボストン大学大学院博士課程修了。Ph.D. in Economics。2005年慶應義塾大学経済学部研究助手を経て、2010年より現職。2014年ボストン大学経済学部訪問研究員。専門は、国際金融論、国際マクロ、対外債務

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なんだろう、このときの圧倒的な時の流れを感じさせるプロフィールは。

「クラスで出席番号が1番」どころではない。

30年の時を経て「阿曽沼多聞」の響きに新たなインパクトが加わるとは、まさか思ってもいなかった。

タモンちゃんすごい。
「エッジの効いた名前」とか変な話してすいませんでした。