まさゆき研究所

ライター・加藤まさゆきのブログです。デイリーポータルZなどに記事を書いています

一回も転ばなくても子供は自転車に乗れる。あと補助輪は悪。

子供(4歳前半)を自転車に乗せることに成功した。一回も転ぶことなく。

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僕は運動にまったく才能がないため11歳ぐらいまで乗れず、子供時代の自己抑圧的な性格を生む原因のひとつになったので、自分の子供が自転車に乗りおくれないようにすることは育児におけるテーマの一つでもあった。

そのため長年、僕なりのステップを考え続けていたのだが、それが見事に実を結ぶ形となった。うれしいのでちょっとブログに残したい。

どうやって乗せるのか?

僕のとった方法自体の大筋は、特段目新しいものではない。ここで細かく説明するより、この記事なんかを読む方がずっと実用的だ

https://iko-yo.net/articles/298
23時間で乗れる子どもも!補助輪なし自転車練習のコツ

 

11歳まで乗れず、乗れなかった頃の記憶が非常に鮮明な僕にとっては、とても当たり前のことだと感じる。大事なのはまず、バランス感覚を養うことなのだ。
しかし、こんな当然のことがいまだに世間に浸透しておらず、いまだに「自転車なんて転んで覚えるもんだ」式の練習が世の中に生き残っていることに悲しみを感じる。

正しい教育法は子供に自信を生み、自分の人生を切り開いていくチャレンジ精神を育てる。

変な教え方をされて人生をゆるやかにこじらせた僕としては、すこしでも正しい指導方法が世に広まってくれればいいと思う。

 

〜加藤家の場合〜 
①最初に何を買うか

選ぶ自転車だが、間違いなく一番いいのは

「へんしんバイク」http://www.henshinbike.com/

「ペダル脱着型ストライダー」https://shop.strider.jp/shopdetail/000000000039/

などの、ランニングバイクからシームレスにペダルつきに移行できるタイプのものである。
本当は僕もこれがいいかなと思っていたのだが、ともに20000円台と結構に高い。
迷っていたら近所のユーズドショップで中古のストライダーが3000円で出ていたので価格に負けてそっちを買ってしまった。

それでも冒頭にリンクした記事の内容にもあるとおり、乗れるために大事なのは平衡感覚の育成なので、その部分では大差ないと思う。
いずれにしろストライダー系を安くても一つ買っておくと、乗れるまでの年数にそれなりの差は出ると思う。(エビデンスはないが)

 

②目標は自転車を漕ぐことではなく、「下り坂で足ハの字」をすること

乗れない子の最大の原因は「漕ぐ」と「バランスを取る」を同時にできるようになれと言われることなのではないかと思っている。

ちょっと自転車の歴史をひもとくと、最初はペダルつきの乗り物ではなく、ストライダーのように蹴って進んで遊ぶものとして二輪車は作られたらしい。
それがあるとき、下り坂なら足をつかなくてもすいすい乗れることに誰かが気づき、そこへペダルやエンジンを付けて、乗り物としての完成を見たらしい。

ということは下り坂ですいーっと下れれば、もう乗れるということなのである。
よって最初の練習は下り坂を下ることを目標とした。
なおそのとき足をハの字(はのじ)にすると、足をつかずに乗れる目標となる上、平衡バランスもむしろ取りやすくなるので、これを実戦的なハードルとして設定した。

こうして、

3歳前ぐらいに与えたストライダーで徐々に2輪感覚を育成しながら駆け回り、

 ↓

下り坂があるときに「ハの字でGO!」と一緒にやって見せながら練習させ、

 ↓

すすっと自転車に乗れるようにするぞ……

 

と目論んでいたが、実際、そう簡単には「下り坂で足ハの字」は達成できず、「まあまあできる雰囲気がするかな……」ぐらいで上達は打ち止めになってしまった。

なお、3歳ぐらいからストライダーで両足ウサギキックをかまし、ビュンビュン飛ばしている男子がいるが、あれはもう天性に平衡感覚が優れているタイプである。
あれができるということは、両足離しが何も意識せずともできるということなので、最初のひと漕ぎ目からいきなり乗れるタイプである。こういう幼児のことはここでは取り扱わない。

 

③いつ自転車を買うか。何を買うか。

これもみんな悩む問題だろう。
加藤家は事情により一度ここで挫折しかけたが、僕の工夫と努力により何とか切り抜けることができた。

買うのは10kg以下の軽量で、補助輪が無いタイプのものが良い。
へんしんバイク系を買っているならそのまま14インチで移行になるだろうが、身長100cmあれば16インチでもいける気がする。
そんな理想を持って4才の誕生日間際に自転車屋に行ったのだが、なんと子供が選んだのは12kgもある補助輪有りタイプのもの。
ここまで指導プランをそこそこ実現できそうになっていた僕としては、いちど家に帰り子供を説得しようと思ったのだが、諸般の事情でそのままそれを買うこととなった。

子供としてはこれはこれで気に入り、ガコガコと補助輪の音を震わせて爆走していたのだが、僕の心には「乗れないロードまっしぐら」の自分の幼少期が思い出され、心も割れんばかりであった。

そして久しぶりにストライダーに乗せてみると、補助輪自転車に乗る前よりも明らかに平衡を取るが下手になっており、「俺のここまでの指導が無に……神よ……」と天を仰ぎ見るような気持ちになった。

補助輪は悪である。子供に「大人と同じ乗り物に乗れた!」という達成感を一時的に味わわせることはできるが、それは決して自転車上達のプラスにはならない。むしろ大きなマイナスになる。

余談だが、補助輪つき自転車を買うか悩んでいるときに自転車屋の店員が「大丈夫ですよ! 途中から補助輪を一個外すなどの練習でだんだん乗れるようになりますし」と言ってきたとき、「あ゛!?おまえそれでも自転車でメシ食ってる人間なのか?」と思わず食ってかかりそうになった。

僕は小学生の時に叔父にその練習をさせられたのが、アホみたいにコケ続けるだけでちっともうまくならず、自転車の練習をするのが大の大の大嫌いになってしまったのだ。
あの店員に自転車を売られる子供たちが、練習を嫌いになることがないことを切に願う。

 

④「達成感>挫折感」を保つ

幸いだったのは、子供が「補助輪があると障害物に引っかかりやすい。あと段差で空転する」という点に気づいたことである。

ここまでストライダーに乗り慣れてきた彼女にとって、明らかに走破性に劣る補助輪の自転車は不合理な乗り物に思えたのだろう。
その発言をきっかけに、補助輪は即刻で取り外してしまった。

そこから補助輪なしで一応乗せてみたが、まあ乗れることはなく、超絶極度の怖がりでもあるので旧来式の「転ばせる自転車練習」に果敢に挑戦することもせず、「ぐらぐらして怖い」と自転車に乗ろうとすること自体をやめてしまった。

僕はそれいいと思う。「転んだ回数だけ乗れる」って一体なんなんだと。
大人でもそうだが『達成感>挫折感』であれば人は何でも楽しく取り組むが、『達成感<挫折感』になれば取り組むのがアホくさくなるものである。教育学用語で言うところの「学習性無力感」である。
旧来の自転車練習は特に『達成感<挫折感』になりやすく、僕もそれで練習させる気はなかったのでここで無理押しはしないことにした。

 

⑤「きっかけ」が来た!

それでも子供の「やっぱり補助輪をつけて欲しい」という頼みは頑として断り続けてきたのだが、初夏のある日、育児用自転車に子供を乗せて自然観察サイクリングに出かけたところ、「自転車に乗って出かけるの楽しいね!」と急に妙なポジティブさを見せたのである。

これはチャンスだ!と勝機を見いだした僕は、例の『足ハの字』理論をもう一度繰り出し、「ストライダーで足ハの字ができたら自転車に乗れるよ」と諭したところ、子ども自ら、眠っていたストライダーを引っ張り出してハの字の練習を始めたのである。

こうなったらもう、ゴールまでは一瞬だった。
ストライダーで「下り坂足ハの字」→「ウサギキック乗り」→「下り坂カーブ」ができたあと、ペダルを取り外して座面最低高にした自転車で同じメニューをクリアさせる。
本人が「ペダルをつけてやってみたい」と言い出したのでつけてみたが、ほぼつけた瞬間からスイスイである。
この間、約2週間ほど。

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ペダルなし自転車で、下りカーブ練習。(転ばせないように必死)

このペダルなしでやって、達成感の連鎖を作るのがポイントだと思う。
きっかけをうまくとらえて、いい連鎖が作れた。
最初は僕の自転車練習理論を半信半疑で聞いてきたかみさんも、この上達ぶりをみて多少は信じてくれたようだった。

もちろん転ぶ練習も必要なので、そういう練習もしたが、それは基本的にある程度乗れるようになってからでいいような気がする。だって普通は嫌になるし。

 

以上、僕なりの1年ちょいに及ぶ長期計画の下での自転車指導に関する記録である。
補助輪つき12kg自転車を買ったときは達成は無理かと自信を失いかけたが、体重50kgの女性でもハーレーに乗れるんだしと自分を励まして指導を続け、何とか達成できた。

これを機にこの子が、自分のできないことにも挑戦する気持ちを少しでも持つことができたらいいと思う。