まさゆき研究所

ライター・加藤まさゆきのブログです。デイリーポータルZなどに記事を書いています

Good Bye from つくば市桜

僕は先月引っ越すまで、つくば市の桜という町に住んでいた。
結婚を機に住み始めて10年、その間にデイリーポータルのライターを始め、猫を飼い、祖母と叔父と父が亡くなり、車も2台乗り換えた。
そして子供が産まれて2年、さすがにアパートでは手狭になったのでこの町から住み替えることにしてしまったんだけど、ちょっとこの10年間の思い出を書いてみたいと思う。

筑波大学が近い

ここに住み始めた一番の理由はペット可の物件があったことなんだが、それと大事なことがもう一つ、筑波大学の真隣であるというのがあった。

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学生寮に棲むネコたち

僕も嫁さんも筑波大の卒業生で、しかも大学に並ならぬ愛情を持つ同士なので、その地に近いというのはほんのりと感じる頼り甲斐にも似た安心感があった。
実際、足を骨折する前までは慣れた大学のコース道路を年中ジョギングしていたし、平日休みの日なんかは学食で仕事をすることもあった。
学生が多いから町の雰囲気も若くて活気があり、そういう意味でも気分のいい町だった。

 

公園がでかい

家のすぐ前にやたらでかい公園があり、これが大好きだった。
引っ越して一番残念なのは公園が目の前に無くなってしまうことだ。
でかい上に人が少なく、基本何してても目立たないのでデイリーポータルの撮影はほとんどこの公園で行った。

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こういう写真はほぼすべてここで撮影した

近隣の調整池となる公園だったので、豪雨のあとなんかにはなみなみと水が溜まり、結構な大きさの池になるのも良かった。
春は桜が咲いて、毎年花見が楽しかった。産まれた初孫を囲んでの花見写真は、惜しくも去年逝去した父の遺影になった。

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春夏秋冬、いつでも撮影に使える(天気図の記事より)

目の前にあるので子供を遊ばせるにもよかった。ちょっと育児で持て余したときなど、この公園に連れ出せば、ご機嫌斜めもすぐに治った。
公園の隣には小さい神社があって、日々に小さく詣でたり、きのこ観察をしたり、松ぼっくり拾いをしたりと、こっちの思い出も尽きない。

この公園ロスから回復するにはしばらく時間がかかりそうである。

 

森が多い、植物園が近い

桜の町は駅から遠く、広々として森も多い。先だっての公園に続いて保安林という謎の杉林、そこからのさらに栗林、それに続いて筑波実験植物園が広がる。森好きの身にとってはこの上ない環境だった。

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原始人ばかりですいません(黒曜石の記事より)

仕事に疲れ果てたときなど、森のゴミ拾いをして1日を過ごすこともあった。

そしてその南にある植物園には年間パスポートを買って通った。1番通ったときは、年間の企画展を全てコンプリートし、記念品一番のりを達成した。
春のサクラソウ展、夏の水草展、秋のきのこ展、冬の温室、いつ行っても楽しめた。

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この植物園から遠ざかってしまうのも、桜ロスを深める大きな一因である。

 

ツタヤ、パン屋、本屋

ツタヤが近くにあり、レンタルコミックをすぐに借りられるのも良かった。僕ら夫妻の最大の共通趣味は漫画読みなのだが、話題作は片っ端からレンタルコミックで読み進めることができた。
そこから少し歩くとグリグリという超絶うまいパン屋があり、そこのバゲットサンドを食べながら漫画を読む休日は桜時代の最大の贅沢だった。

本屋が途中で無くなってしまったのは残念である。

友朋堂という筑波大生の知を支えた名店があったのだが、出版不況により閉店を余儀なくされてしまった。閉店当日のシャッターが下りる瞬間には僕も駆けつけ、ツイッター民に報告しながらその最後を見送った。

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なお、その後本屋の跡地には24時間営業のドラッグストアが入ったのだが、いざ店が替わってみると、本屋時代よりもそっちの店に行くことが多かったのは、認めざるを得ない事実である。

 

それでも桜に別れを告げた

ここまで書くと、なら桜に家を建てれば良かったじゃないかという気もしなくはない。
事実、それでも悪くはなかったんだけど、「とにかく駅から遠い」という致命的ビハインドがあり、子供が自立して行動する上で駅から遠いのはちょっとかわいそうだなと、やはり思ったのだ。
前まではなんだかんだと月に4〜5回は都内に出ていたのだが、歩いて帰ると60分という遠い家路のつらさは身に堪えるものがあった。
新しく移った町である研究学園は駅前の町だし、もちろん気に入って引っ越したんだけど、桜に住んでいた頃の穏やかで小さな生活が早くも懐かしいような気がしている。