まさゆき研究所

ライター・加藤まさゆきのブログです。デイリーポータルZなどに記事を書いています

神の造形ことアンパンマンは世界へ羽ばたく

アンパンマンは神のもたらした造形であり、全ての幼児は一度アンパンマンの洗礼を通過する」との箴言がある。

子を授かって以来、ほんとかな?と思いながら育ててきたのだが、たしかに噂は本当だった。
家では何一つ買い与えないでいたのだが、それでもお店のノボリや、託児所のカウンターに潜むアンパンマンを目ざとく発見して知るようになり、今では発語の8割が「あんぱん!」である。

しかしこの理由は、ここまで観察して経験的に理解してきた幼児の発達段階から、全てすんなりと説明がつくもののように思える。簡単にまとめたい。

 

1.乳児ははじめに「顔」を認識する

全ての動物がそうであるが、幼児が最初に認識するのは点が二つある構造の「顔」である。顔を認識することで、幼児は親や他の動物を存在として認識する。
もちろん、アンパンマンについては言うまでもない

2.乳児は「突起」と「丸」が好き

乳児は「突起」が好きだ。ハイハイを始めて様々なものに触れられるようになると、服や毛布のタグや、ねじの頭など、ありとあらゆるものから真っ先に「突起」を見つけ、それを触ろうとする。これはおっぱいから乳首を探すための本能的な行動なのではないかと考えられているらしい。

同じ理由で「丸」も好きだ。幼児番組「いないいないばぁ」で、ボールが坂や滑り台を転がっていくだけの映像のコーナーがある。大人には「何が面白いんだ?」となるのだが、乳児には大ウケ、画面を指さし、見て!との勢いで「あー!あー!」と大興奮で声をかけてくる。

アンパンマンの顔の形、鼻の突起、それは乳児にとって「おっぱいのキャラ化」とも言える造形なんだろう。

3.乳児は原色が好き

これも言うまでもないが、乳児は本当に原色が好きだ。
うちの子供は、出先にある「こども用コーナー」を見ると一目散に駆けていって遊び始めるタイプなんだけど、おそらくあのコーナーの「原色」が彼女にとってそこが「自分のため」であることのサインになってるんじゃないかと思っている。もはや好きを越えて、ちょっとしたアフォーダンスだ。

アンパンマンの赤い鼻、黄色い衣装は、彼女にとってそのキャラが「自分のため」であることのアピールのように思えているんじゃないだろうか。

4.発音しやす過ぎ

子供が成長とともに発音できる音をていねいに観察している。

「あ」「え」「お」は0歳児時代から問題なく発音できており、子音は最初に「か行」と「ば行」が、続いて「ぱ行」「が行」「わ」「ん」発音できるようになった。

つまり「あんぱん」は乳児にとっては単語として第一級に発音しやすい音素から構成されているのである。ちなみに「ま行」はそろそろ習得できるらしいので、「あんぱんまん」まで考えてもやはり完璧である。

 

というわけで、全ての要素が全て計算されたかのように乳児の認識能力に合致しているキャラ「あんぱんまん」。これをスル―するのは乳児にとってほぼ不可能なのではないだろうか。

海外展開がどれだけされているか知らないが、もしかしたら50年後ぐらいに全世界の乳児がアンパンマンの洗礼を受けるようになっていても不思議ではない。